ドラックスに教えてもらったランゴスというペット業者(?)のところにやってきた。
ワシ「カンパ~イ!」
ワシは大声で叫びながらドアを叩く。
ランゴス「なんだ急にうっせえな! 俺の犬に噛みつかれたくなけりゃさっさと失せな!」
案の定、すごい剣幕で起こりながら一人の男が飛び出てくる。
ワシ「さすがに今のはあり得なかったよな。すまんすまん。誰かがいるのか確認したかっただけなんだ」
ランゴス「だからっていきなり乾杯って本当かよ? 頭大丈夫か!?」
ワシ「まあまあ。それよりここで相棒を紹介してもらえると聞いたんだが」
ランゴスはいぶかしげな顔をしながらも、会話は続けてくれるようだ。
ランゴス「ああ、そうだよ。見たところ、あんたに必要なのは愛玩用のダックスフンドじゃなさそうだ」
ワシ「種類は気にしてないが、何がいるんだ?」
ランゴス「今すぐに用意できるやつだと、牧羊犬の子犬ならどうだ? 300クラウンでいい」
ワシ「今はそんなに持ち合わせがない。もう少し安くならないか?」
ランゴス「犬が欲しいなら諦めな。今すぐにとは言わねえよ。用意できたらここに来な」
要がすんだとばかりにランゴスは手作りの小屋の中に戻っていく。
300クラウンか……防寒着も用意しなければいけないってのに、どう用意すればいいのか。
ランゴス「ああ、そうそう」
ドアの前で悩んでいると、何か思い出したように悪い顔をしたランゴスが飛び出してくる。
ランゴス「もし金に困っているならいい話があるんだけど、聞くかい?」
ワシ「聞こうか」
ランゴス「へへ、この近くに古い製鉄所があるんだが、そこの連中は廃棄で出る鉄屑をそのままゴミとして捨てているんだ」
ワシ「それがどうした」
ランゴス「まあ聞けって。でだ、俺に言わせりゃ奴らはなにもわかってない。奴らにとってはゴミだが、俺から見れば宝に見えるんだよね。つまり、そのままだと廃棄物として捨てられるゴミを俺たちが救出して、有効活用してやろうやっていう話さ」
ワシ「鉄屑なんか持ってきても金にはならんだろう」
ランゴス「実は、俺の知り合いにそう言った鉄屑を買い取ってくれる業者がいるんだよ。出どころ不明品でもお構いなしで買い取ってくれる太っ腹なやつがさ」
ランゴスはそういうとここだけの話なんだから誰にも漏らすなよと念押ししつつ話を続ける。
ランゴス「俺はあんたにその場所を教える。あんたはそこから鉄屑を救出して、業者に売る。どうだ? 簡単な話だろう?」
確かに、結局捨てられてしまうものなのなら、盗むことが少し気が楽になりそうだ。美味しい話だと思ったし、誰も損しない。
ワシ「いや待て、それだとランゴス、お前が得しないじゃないか。何か条件があるんだろう?」
ランゴス「おっと、流石にそこまで馬鹿じゃないんだな。ますます気に入ったよ。もちろん、俺にもご褒美があって然るべきだ。そうだろう? 場所とタイミングを教える代わりに、業者に売った金の一部を俺に支払ってくれ。満足いく金額を持ってきてくれればまた次の場所を教えてやる」
ワシ「ワシが裏切って打った金を持ち逃げすると考えないのか?」
ランゴス「無事に帰って来れたら次の儲け話を教えてやるんだ。裏切った方が損、そうだろう? それに、嘘をついたらあんたは一生俺から犬を渡してもらえなくなるんだ」
確かにそうだ。
ワシ「いいだろう。乗った」
ランゴス「そうこなくちゃな。ほら、今回のターゲットはここのトレーラーの中だ。ヘマするなよ」
そういってランゴスは地図の一箇所を指差し、じゃあなと言って今度こそ小屋の中へと戻っていった。
さて、正規ではないにしろ、初めての仕事だ。気合を入れていくか。
言われた場所にたどり着くと、そこは廃品置き場となっているようで鍵のかかったトレーラーが一台の他にもいろいろ役に立ちそうなものがあった。
その中でも特に目を引いたのが業務用ゴミ箱だった。
マスター曰く、業務用ゴミ箱とは、家具やら服やら食べ物やら、とにかくホームレスが普段お目にかかれないような貴重なものも入っている……かもしれないという夢のお宝箱的な存在なのだという。
近寄ってみるとゴミ箱だからかこちらには鍵もかかっていない。ということは、漁り放題ということだ。
ワシは欲望に抗えずにまずはこちらから取り掛かることにした。
徹底的に、漁れー!!! 恥を捨ててとにかく漁るんだー!!!
一心不乱にゴミ箱ダイブし、少しだけその流儀が身についた気がする。
しかし、まだまだ練度が足りないため、服や身体にゴミの嫌な臭いが染み込んでしまった。
この行動が後に、ワシを極限まで追い詰めることになろうとはこの時のワシには知るべくもなかった。
その後、ワシはランゴスに言われていたとおり、トレーラーの鍵をピッキングで解錠し、中にはいっていたくず鉄を全て懐にしまった。
……どうやら誰にもバレずに盗むことに成功したようだ。
緊張したからか腹も減ってきた。とにかくこの場をすぐに離れて買取業者のもとへと急がなければーー
男「おい、お前そこでなにをやっている」
ワシ「げ!」
まずい! 即効離脱!
ワシは振り返らずに男の横を駆け抜けた!
男「あ、おい!」
男が慌てて追いかけてくるが時すでに遅し。ワシは大通りに出て、人に紛れつつ買取業者のもとへと走ったのだった。
男を巻いたワシは指示どおりに買取業者:コトラーに盗んできた鉄くずの買い取りを依頼する。
コトラー「いいね。くず鉄一つで30クラウンで買い取るぞ」
今回盗んできた鉄くずは4つ。合計120クラウンの儲けだ。
コトラーからお金を受け取り、ワシはうきうきでランゴスのところへ戻る。
ランゴス「おお、どうだった?」
ワシ「いい感じだったぜ。ほら、これが分前だ」
ワシは換金した120クラウンから80クラウンをランゴスに渡す。
ランゴス「いいね! やっぱりあんた最高だぜ」
ランゴスは色々と役に立ちそうな知識や情報を持ってそうだ。なるべくなら恩をうっておいたほうがいいだろう。
ワシはこれからも定期的にランゴスのところへきて今回のような仕事がないかを聞くことにした。
ランゴス「それはそうとあんた、少し臭うな」
ワシ「え、そうか?」
自分の腕を嗅いでみるがあまり臭いとは感じない。まあ、多少は生ゴミ臭いとは思うがその程度だ。
ランゴス「いい仕事をしてきたあんただから教えてやってるんだ。ありがた〜く聞いておいたほうが身のためだと思うけどな。まあ、俺の知ったこっちゃねえがよ。じゃあな」
そう言われても、シャワーを浴びる手段もないし、どうしろってんだ。
もう一度自分の臭いをチェックするが、どうにもそこまで酷い臭いとは感じない。
まあ、少しくらい臭くなっても大丈夫だろう。
ワシはそう思い気にしないことにした。
¥¥¥残金:55クラウン¥¥¥
・バッドステータス
◯悪臭(軽度)