ヘロルドから聞く限り、この選挙には誰でも参加できるわけではないようだ。ホームレスの中でもある程度影響力のあるリーダーに投票する権利が与えられるようだ。
この場所を教えてくれたクレイジーも大きなグループの一人であるため彼からの信頼も得ていく必要がありそうだ。
他には酒徒を率いるザッヒ、非暴力主義を掲げているホームレスグループのフォートのリーダートニーなどが票保持者となっているようだ。ワシは現状、投票することもできないただのホームレス。
ワシがするべきことはグループを作り、投票できる権利を得ること――ではなく、彼ら票保持者の信頼を得て、ワシ自身に投票してもらうことだ。わざわざ大きいグループを作らなくても、投票をしてもらうこと自体は可能とのこと。
ワシ「ちなみに、今のワシの信頼度ってどのくらいなんじゃ?」
ヘロルド「ふむ、あなたの話は聞いたことがない。今のままでは勝つことは不可能そうじゃな」
ワシ「そうか」
誰彼構わずに助けているだけでは投票してもらえるわけではないようだ。
ちゃんと投票権のあるヤツだったり、そのグループや側近の人物を助けていくことで徐々にターゲットの信頼を高めていくことができるはずだ。
まずは先程まで話していたクレイジー、
酒徒を取りまとめているザッヒの側近であるカーディナル、
そして、グループ:フォートのリーダー:トニー、
このあたりから信頼を得ていくのが良いだろう。
ワシ「ありがとうヘロルド、参考になった」
ヘロルド「いいさ。せいぜい頑張ることじゃな」
ワシ「おう」
ヘロルド「ふむ、同じ志を持つ同士として、これをあなたに渡しておこう。ただし、これっきりだからこれ以上の期待はしないこと」
ワシ「? ありがとう」
ワシは礼を言って、ビルを出る。
物乞い王になれば誰もワシのことを知らない、必要としていないこの現状から開放されるはずだ。誰もがワシのことを知っていて、ワシのことを必要としている世界。記憶を失ってしまい、誰も知り合いがいない世界を体験中のワシからすれば夢のような世界だ。
ワシは物乞い王になって、この街にワシという存在を刻みつけたい!
気合を入れ直したワシは鼻息荒く再び歩き始める。
そう言えば、ヘロルドから渡されたものはなんなんだろう?
調べてみるとそれはお守りだった。
【回復のタリスマン】
不思議な力を感じる……なんとなくそのお守りを握りしめるとふわりと消えてしまう。
なんとなく感じていた身体の不調が吹き飛んだような気がした。これは、もしかしてとんでもなくいいものを貰ったのでは?
あらためてヘロルドに感謝しつつ、ワシはアナトリーの元へと向かう。
あれから時間もたったことだ。お互いに冷静になって話し合いができるようになっているといいんだが。
ワシ「やあアナトリー」
アナトリー「ああ、アンタか」
ワシ「その、先日は――」
アナトリー「いや、いいんだ。俺も思わず熱くなっちまった」
ワシ「そうか、ありがとう。こちらも言い過ぎたよ」
アナトリー「これから彼女のところにいって建設的な話をしようと思ってる。嫌がらせとか、そういうこと以外での付き合い方を模索してみるつもりだ」
ワシ「商売に関してお前は天才だ。好きなようにやってくれ。その先には成功があるはずだ」
アナトリーの方も思うことがあったのだろう。
とにかく、これからもアナトリーと付き合いを継続していけるようだ。一つ、ワシを取り巻く問題を解決できてワシは満足だ。
過去のしがらみを解決したことで、これから始まる選挙に全力で挑むことができる。
さあ、明日からは忙しくなりそうだ。
¥¥¥残金:1161クラウン¥¥¥
・バッドステータス
◯なし