ゼッヒの店を退店し、軒先でしばらく雨宿りをしていたが。コーヒーを飲み終わっても雨は止む気配がない。空を見れば曇天が空のずっと向こうまで切れ間なく続いている。
幸い雨足も強くないし、ワシは結局走ってスパーニのところに戻ることにした。
スパーニ「おう、アンタか。どうだった」
ワシ「ああ、ゼッヒはしばらくワシの来店を忘れることはないだろうな。もっとも、ワシがやったと気がつけばの話だが」
スパーニ「何をやったんだ? いや、やめておこう。後でゼッヒの顔をみて笑いたいし」
本当に同じ経営者なのか? と純粋に思わせるほど人としての格がゼッヒとコイツでは違いすぎると思った。
ワシ「まあ、それならそれで自分の目で確かめてみればいいさ。どうだ、このへんのホームレスも悪いばかりのヤツだけじゃないだろう」
スパーニ「そうだな。アンタみたいなクールな奴がもっといてもいいと思う。ちょっとしたお遊びに付き合ってくれてありがとう」
ワシ「……ああ。お安い御用だ」
お礼を言われて心がズシリと重くなったのはこれが初めてだ。まあ、今回はだれも損はしていないからいいとしよう。
まあ、騙したことは事実ではあるから、せめてもの罪滅ぼしとして酒徒達にランドリーを利用する時は最低限のマナーを守るようにカーディナルに通達してもらおう。
ワシ「じゃあ、そろそろ行くよ」
スパーニ「おお、そうか。思ってたよりも楽しい時間だったぜ」
帰り際、ふと視線を横にずらすと稼働していないいくつかのドラム型洗濯機が目に入る。だが、ゼッヒに言われた言葉が頭の中で消化不良を起こしているせいか全くなにかする気にはならなかった。
さて、心を入れ替えて今回のことをまとめて報告しにカーディナルのところへ戻ろう。
ワシは酒徒のアジトまでの道を雨の中、再び走った。
地下鉄の使われなくなった駅。ここに来るのも久しぶりに感じる。
ワシは濡れた服をアジトにある焚き火で乾かしてからカーディナルに話しかける。
ワシ「よお相棒。頼まれていた件について、ある程度改善できたと思うぜ」
カーディナル「ほお、何をしてきたんだ?」
ワシはバーや公衆トイレ、そしてランドリーで行った活動について報告した。
カーディナル「……まさに大活躍ってわけだな。アンタはヒーローだ。これで世間からの風当たりも少しは良くなると良いんだが」
ワシ「もし、悪評が広まったらまたワシを頼れば良い」
カーディナル「確かにな。そうすることにするよ。なあ、ついでと言っちゃあ何だが、もう一つ頼まれ事を聞いてくれないか?」
ワシ「アンタとワシの仲じゃないか相棒。遠慮しないで言ってくれ」
カーディナル「ふっ、そうだったな。実はここの稼ぎ頭の一人にジェキンスって男がいるんだが、最近外部の奴にそそのかされてるらしく、本当の酔っぱらいの穀潰しになっちまったんだ」
ワシ「ほう」
カーディナル「ヤツはそこの階段を下ってすぐの段ボールハウスに住んでいる。アンタにはジェキンスの更生を手伝ってほしいんだ」
ワシ「オーケーだ」
カーディナル「ありがとう。この依頼をこなしてくれたら、アンタにもここの新たな試練を受けられるようにリーダーであるザッヒにかけあってみるつもりだ」
カーディナルは真剣な顔つきでワシを見つめる。その試練ってやつをクリアできればザッヒからも一目置かれる存在になれるだろう。そうなればザッヒもワシに投票する気になるかもしれない。ようやくここまで来たって感じだ。
ワシ「やる気が出てきたぜ。それじゃあ様子を見てくるよ」
ようやく酒徒グループの中枢に潜り込めそうだ。この依頼を完璧にこなし、ザッヒからの信頼を得る。
明確な目標ができたワシはやる気満々で階段を下っていくのだった。
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・バッドステータス
◯なし