第30回 特別性の蜂蜜酒を奪取せよ

 酒徒のアジトの地下へ続く階段、ここを降りるのは2回目になる。

 そこは相変わらず光のない世界。最深部にある焚き火以外に光源はなく、手持ちの懐中電灯で照らさなければ進むことすらできない暗闇だ。

 階段を降りきると人一人がギリギリ横になれる大きさの段ボールハウスが目の前に現れる。

 カーディナルの話ではここがジェキンスの住処らしい。

 今回の任務の達成条件は、ここの稼ぎ頭の一人であったジェキンスが最近全く働かなくなってしまった原因を突き止め、彼を以前の状態に戻すことだ。

 なぜ働かなくなってしまったのか、それを知るためにはまず本人に話を聞くのが手っ取り早いだろう。

 ハウスの入口の前に座り、とりあえず声をかけてみる。

ワシ「おーい、ジェキンスはいるか?」

ジェキンス「ああんだ、おえええええはおおおおお。おえはおえだかあおえなああんだああおおお」

 ワシの呼びかけに反応して一応ハウスの中から返事らしき答えが帰って来るが、明らかに話せないくらい酔っ払っている。ここの連中はまともに話せるヤツのほうが少ないのを忘れていた。

 確か、以前にもこんなことがあった気がする。そうだ、あれは酒徒の最初の試練を受けたときだ。酔っぱらいと話す時は同じくらいに酔っ払わないといけないんだった。

 ワシは覚悟を決め、手持ちのパックワインをいくつか一気に飲み干す。途端にカッと胃の中が温かくなり、頭の中がフラフラしだす。ああ、この感覚はひさしぶりだな、と他人事のように思った。

 ワシは再度ジェキンスに話しかける。

ワシ「よお相棒」

ジェキンス「ああ、ジェキンスは俺だ」

 やはり、お互いに酔っ払っているとまともに会話できそうだ。

ワシ「カーディナルが心配してるぜ。なんで働かなくなったんだ?」

ジェキンス「知らねーよ。俺にはもっと優先するべきことがあるんだ」

ワシ「例えば?」

ジェキンス「最高級の特別な蜂蜜酒を飲むとか?」

ワシ「蜂蜜酒?」

ジェキンス「もうあっちにいけ」

 その後も何度か呼びかけてみたが反応が返ってくることはなかった。 

 さて、どうしたものか。とりあえずここらへんの酒徒にも聞き込みを行ってみることにする。

 そこでワシは有益な情報を手にすることになる。

ワシ「よう相棒。最近ジェキンスの様子がおかしいんだが何か知らないか?」

バズーカ「よお。それなら知ってるぜ」

ワシ「いったい奴になにが起きたんだ?」

バズーカ「ヤツは前までまともな奴だったんだがな。ある時から蜂蜜酒ばかりのむようになって、それからはあのザマだ。今じゃ蜂蜜酒のためならなんどもやるだろうぜ」

 蜂蜜酒、確かジェキンス自身もそんなことを言っていた。

ワシ「ただの蜂蜜酒だろ? やつから取り上げれば済む話じゃないのか」

バズーカ「そう単純ならいいんだけどな。ジェキンスに蜂蜜酒をやってるのはペッペという男だ。コイツがおそらく蜂蜜酒になにか細工をしていると俺は考えてる。いまじゃジェキンスはペッペのいいなりだしな。しかもたちの悪いことにこの蜂蜜酒はこのアジトのいたるところに隠されてるんだ。アイツらしか知らない秘密の隠し場所ってやつだよ。以前にジェキンスに殴られながら蜂蜜酒を取り上げたことがあるが、数分後には別の蜂蜜酒をもってやがった」

ワシ「それを全部見つけて処分すれば、この話は解決するってことでいいか?」

バズーカ「それは知らんが、少なくても今よりは良い状況になるだろうな」

ワシ「ありがとう。いいことを聞いたよ」

 ジェキンスの住処は大きくなく、蜂蜜酒をそう何本も隠せておけるスペースはない。いまアジトに隠されてる蜂蜜酒を処分してやればそれで解決するかもしれない。

 やることが決まればあとはやるだけだ。

 ワシは蜂蜜酒の捜索を開始した。

¥¥¥残金:5093クラウン¥¥¥

・バッドステータス

◯酔っ払い(軽度)

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