第37回 テスターパッケージ

 密売グループのアジト掃除を頼まれたワシはせっせとそこらに散乱している汚物を回収している。こういうのは無心で行うのが好ましい。

 掃除をしがてら周りにいる連中を観察するが、ワシがいることにすら気がついてなさそうな様子でぼーっとしていたり、うめき声を上げていたり、ニヤニヤしていたりとまともな感じではなさそうだ。

 密売グループの一員だからといって自分は薬を飲まないなんてことではなさそうだ。

 そんな現実逃避混じりな思考を途切れさせずに手を動かし続けること数十分、さして広くないこの空間からニオイの発生源と思われる固形物は全て取り除いた。ワシは袋の口を固く、固く閉じる。

ワシ「おい、終わったぞ」

ラムゼイ「え? あ、ああ。そうだったな。うん、ありがとう」

ワシ「どうかしたか?」

ラムゼイ「え、いや。そろそろ薬が切れるころだからな……中毒にならないよう一日に接種する量は制限してるんだ」

 なんか集中してないと思ったらコイツも中毒者の一人だったようだ。まだ、比較的軽度みたいだが、健常者(ワシ)からみたらどうみても中毒者にしかみえない。

ワシ「そうか、それはいいな。で、ここの掃除が終わったわけだが、これでキティに合わせてくれるか?」

ラムゼイ「いや、あと一つやってもらうことがある。これだ」

 ラムゼイはそういうと梱包された小さな箱を手渡してくる。

ラムゼイ「これを少し行ったトンネル内にいる俺のダチ:スターキーに届けてやってほしいんだ。絶対に落とすんじゃねえぞ」

 渡された箱はやけに軽い。何が入っているかは今更聞くまでもなさそうだ。

ワシ「……わかった。そのダチってやつはもう薬をやってるんだよな?」

ラムゼイ「そりゃまあ、俺達のグループの一員だしな」

ワシ「そうか。じゃあ、行ってくるよ」

 これを届けることは犯罪だ。ただ、その相手がまだ薬の世界に足を突っ込んでいない奴なら断ろうと思った。そうでないなら、ワシが届けなかろうが誰かが届けるかするだろう。なら、ワシの野望のためにこれはやむを得ないことだ。

 そう自分に言い訳をしながらワシはスターキーを探すことにした。

 幸いなことにスターキーは言われたとおりにアジトからほど近くにいたので探すのにそんなに時間はかからなかった。

ワシ「よお、ラムゼイからアンタへの届け物を預かってる」

スターキー「お、いいね。早く渡せよ」

 ワシはもってきた箱をそのまま手渡す。

スターキー「おい、これはテスターパッケージじゃねえか! ふざけやがって。さっさと失せな、期待させやがって」

ワシ「テスターパッケージ?」

スターキー「失せろっつってんだろ!」

 なぜかわからないままスターキーは怒り出したのでワシは退散することにした。テスターパッケージということはワシを試すための空箱かなんかだったのか。

 まあ、いきなり本物のブツを渡してくるわけがないか。ワシはどこかホッとしながらラムゼイに報告しに戻る。

ワシ「よお、渡してきたぜ」

ラムゼイ「どうやらサツのスパイとかでもなさそうだ。いいぜ、ボスに会いな」

 ラムゼイは顎をクイッとやり、隣の部屋にいくように言う。

 ようやくこのグループのボスとご対面ってわけだ。ワシは意を決して隣の部屋へと足を踏み入れた。

¥¥¥残金:6114クラウン¥¥¥

・バッドステータス

◯なし

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