ザッヒからの投票を得るため、ワシは酒徒グループの困り事を解決してやることにした。相談の窓口はザッヒの側近であるカーディナルという男だ。立派なあごひげをたっぷりと蓄えた彼もまた常に酒瓶を握っているような酒ジャンキーだが、いつも話せるぐらいには節度を保っている。
カーディナル「さて、アンタはザッヒからお墨付きを得たわけだが、それだけではここの連中に認めてもらうことはできない」
ワシ「じゃあ、どうすればいいんだ?」
カーディナル「ここでは酒がルールであり、全てだ。以前にも言ったが酒仙(第6回参照)と飲み比べをして認められれば酒徒として認められる」
そう言えばそうだった。確か、以前は酒徒になろうと意気揚々と酒仙の3人に話しかけたら酔っ払いすぎていて話すことさえできなかったんだ。
ワシ「でも、あいつ等はずっと酔っ払っていて飲み比べどころか話しもできない状態だった。どうしたらいいんだよ?」
カーディナル「そこも含め試練だ。認めてほしければ知恵を絞って考えな」
カーディナルはそう言うと固く口を閉ざしてしまう。
ワシはその場にいても仕方がないのでとりあえず外に出る。
酔っ払い相手に会話を成立させる方法……まさか水を与えても素直に飲むような奴らじゃないしな。
どうしようかと考えていた時、ワシは一つ大切なことを思い出した。
ホームレスは助けていくことで生きている。
これまでもワシがわからないことは様々な仲間に助けてもらった。今回もそうすればいいんじゃないだろうか?
だとすれが、誰に聞くのがいいだろう?
ゴミ捨て場のマイズナーだろうか? いや、彼の生活圏内には酒徒はいない。知らない可能性のほうが高そうだ。逆に言えば、生活圏が被っているところに拠点をおいているホームレスを頼るのが良いんじゃなかろうか。
そう言えば、ザッヒが伝言を残したのは駅の高架下に拠点をおいているホームレスグループのリーダー:クレイジーだった。彼なら酒徒について多少詳しいかもしれない。駄目で元々だ、行ってみよう!
ワシはさっそくクレイジーの元へと駆ける。
ワシ「よおクレイジー。ザッヒにあってきたぞ」
クレイジー「そうか、どんな話だったよ」
ワシ「まあ、挨拶みたいなもんだったよ。今は彼らの信頼を得るために酒徒にならなきゃならないんだが、酔っ払いと話す方法がわからなくて苦労してるところだ」
クレイジー「ふーん、そうか。酒徒になっても周りに迷惑をかけるなよ。あまりに目立つと警察が増えてこっちも迷惑するんだからな」
ワシ「肝に銘じておくよ。ところで、酒徒と話す方法について何か心当たりはないか?」
クレイジー「よくわからんが、あいつらと同じぐらい酔っ払ってみたか?」
ワシ「いや……その発想は、なかった」
クレイジー「酔っぱらい同士なら話せるんじゃねえの? まあ、アイツらの考えとか知らんけどな」
ワシ「いや、ありがとう。とりあえずやってみるよ」
郷に入っては郷に従えってことか。確かにそれが答えなのかもしれない。
礼を言ったワシは教えてもらったように、泥酔状態になってから酒仙に話しかけてみることにする。まずは酒だ。ワシはこれまでに集めたビールやらワインやらラム酒やらを開けまくり、千鳥足になるまで飲み続けた!
ワシ「よおー、カーディナルからの使いだ。ワシも酒徒になりたいんじゃ!」
酒仙1「素晴らしい。準備は整っているか?」
こいつはたまげたー! ちゃんと話すことができたぞ! これでようやく飲み比べができる!
ワシ「じゃあ、試練をうけてやろうじゃないの!」
勝負の方法は、お互いが交互に好きな酒を指定し、同じ酒を同じ量飲み干す。それを続けていって先にダウンしたほうが負け、というわけだぁ!
ワシ「飲み続ければ勝てるなんて楽勝だぜー!」
ワシはとにかく飲み続けた。何を飲んだかわからないが、とにかく飲み続けたのだった。
酒仙1「あ、ありえねえ! うっぷ、アンタは本物だあ! うっぷ、カーディナルには俺から口添えしてやるぞー」
なんか知らないが勝ったらしい! このままいくぜえ!
酒仙2・3「す、すげえー! アンタは本物だあ!」
最後の酒宴を生き抜いただけあってワシには酒飲みの才能があったらしい。正直、この試練のことはあまり覚えていないが、酒仙に対し鬼の3人抜きをしたうえにその飲みっぷりには鬼気迫るものがあったらしく、酒徒の間は今でも伝説になっているという話を後から聞いた。
¥¥¥残金:170クラウン¥¥¥
備考・酒代に消えたと思われるが詳細は覚えていない……。
・バッドステータス
◯酔っ払い(重度)