マスターのお使いをクリアするためにワシはバーへ向かった。
産まれ(変わって)から初めて店に入る。緊張しながらも、なんとか金髪のお嬢さんからドラフトビールを購入することに成功する(25クラウンは痛手だ)。
少しだけ達成感を覚えながらワシはマスターのもとに戻る。
ワシ「ほら、持ってきたぞ。なにか思い出しそうか?」
声を掛けるとキャラバンのドアの隙間から年老いた老人が顔を覗かせた。
マスター「ああ、最高だ。実のところ、ワシのお願いを聞いてくれるヤツが現れたのは本当に久しぶりだ」
ワシ「そりゃどうも」
マスター「ふん、記憶のことについて知りたいんじゃったか。お前は鉄道駅にいる酒徒と呼ばれる者たちを知っておるか?」
ワシ「いや、あいにく記憶がないもんでね」
マスター「そうだったな。で、そいつらは定期的にある儀式を行っておる。「最後の酒宴」を言われている気が狂った催しだ。奴らはそこで死ぬまで飲み明かそうとする。比喩ではないぞ、実際に死人も出るほどだ」
そんなものにワシも出ていたのか。記憶を失う前に一体何があったんだ。
マスター「だが、それも全員が成功するわけではない。最後までついていけずに死んでしまう者、リタイアする者、そして記憶を失ってぶっ倒れる者もいるようだ。そう、お前のようにな」
ワシ「そんな理由だったとはね。情けなくて泣いちまいそうだ」
マスター「過去を悔いることはできるが、大切なのはいつだって未来だ。これからどう生きるかを考えていけ。そのほうが酒もうまくなるしな。ビールをどうも」
ワシが記憶を失った理由がわかってガッカリしたのは確かだが、ムカつくがマスターの言う通り、これからのことを考えたほうが良さそうだ。
で、いいことを言って満足したマスターがキャラバンに引っ込みそうになったのを無理やり止め、ワシはホームレスのノウハウをマスターから少し聞き出した(もう少し話したらまたビールを要求されそうだった)。
向かう先は鉄道駅にいるという酒徒と呼ばれる者たちのところだ。
相変わらず世間は厳しいみたいだが、懲りずに声をかけていく。
そうして歩いていると、ワシの視界にあるものが飛び込んでくる。
ゴミ箱だ。マスターから教えてもらった話によると、ホームレスはこういったゴミ箱から役に立つものをサルベージ(カッコつけてるが要するにゴミ漁りのこと)しているらしい。
こんな人目につく場所でゴミ箱に突っ込んでいくのか。だが、これくらいしないとワシのようなものは生きてはいけないのだろう。
やらなければならない。そう思った途端に謎にやる気が湧いてきた!
漁れーい!ゴミ箱を、徹底的に、漁れー!!
ワシ「アウチ!」
ゴミを漁っていると手に何かが刺さった。
痛かったが、ワシは食べかけのご飯と飲みかけのコーヒーを手に入れた。少し工夫すればこれらも飲み食いできるようになるはずだ。ゴミ箱から離れて冷静になるとまだワシの中に羞恥心があることに気がつく。
ゴミ箱ダイブを繰り返していけばこの感情もなくなるのだろうか……。
複雑な気持ちになりながらも、ワシは新しい技術「ゴミ箱ダイブ」を覚えたのだった。
¥¥¥残金:40クラウン¥¥¥