第10回 ホームレス、最後の時。そして――

 漏れる。

 すでに走る気力もなく、ヨタヨタと歩くことしかできない。

 まずはスタミナの回復が最優先だ。手持ちのコーヒーを3杯飲み干すことで無理やり眠気を醒まし、スタミナを回復。

 便意及び尿意に多大なるダメージが入るが走れないよりマシだ。

 続いて士気だ。いざというときのために買っておいたお宝本にサッと目を通す!

ワシ「む、むっはー!」

 読んでいるときだけは体調の悪さなどすべてを忘れて没頭できる。しかし、現実に戻ってきたときには地獄がリスタート。とにかくこれで士気も回復し、生きる気力が湧いてきた!

 あとはこの便意をどうにかしなければ!

 ワシは必死にトイレに向かう。

 ようやくたどり着いたトイレは極楽浄土のように見えた。

 ドアをノックし、清掃員のオバチャンにチップを払おうと声をかける。

ワシ「頼む! トイレを――」

清掃員「臭っ! ちょっと入らないでくれるかい!? 掃除したばかりなんだ!」

 そう言ってオバちゃんはドアを閉じて一切応答してくれなくなる。

 ば、馬鹿な! このままじゃ……!

ワシ「だ、だれか……トイレの場所……を」

 凍えていることもあり、意識も朦朧としてきた。

 なんとか街行く人に他にトイレの場所を知らないかを聞こうとするが言葉がでないばかりか、近づこうとするだけで小銭を投げつけられ追っ払われる始末。よっぽど近づいてほしくなかったらしい。

 とにかく寒すぎて言葉も話せない……店で酒を買って一時的にでも身体を温めなければ本格的にヤバい。

 この時点でワシはすでにトイレを諦めていた。

ワシ「さ、酒をくーー」

店員「バカ! それ以上近寄るな! いますぐ出ていけ!」

 やっとの思いで入った店内から即座に叩き出される。臭すぎるせいで誰も話してくれないようだ。

 そういえば……トイレに向かう途中で親切なお姉さんからホームレスでも診てくれるという医者の場所を教えてもらったんだった。

 確か、名前はドクターハンサム。場所はジシュコフにある古い家の一階……。

 そこなら暖を取りつつ命の危機を救ってくれるかもしれない。

 ドクターハンサムのもとへ行くべく、ワシはとにかく必死になって足を動かしていた。

 が、やがてそれすらもできなくなり、ワシは極寒の中前のめりに倒れ込む。そして、体中から痛みや寒さといったすべての感覚が薄れていく――。

 『あっ、これが死ぬってことか』

 そう思ったのを最後に、ワシの意識はそこで途切れた。

¥¥¥残金:220クラウン¥¥¥

・バッドステータス

●死亡

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