そこは大通りから一本奥に入ったわかりにくい場所にある店だった。これは教えてもらわないと気付きようがないかもしれない。
ワシ「邪魔するよ」
アナトリー「いらっしゃい。アンタは新顔だな」
ワシ「ここは質屋って聞いたが?」
アナトリー「まあそうだが、アンタは住む家がないんだろう?」
ワシ「ああ、そうだが」
アナトリー「俺も元々はそっち側出身でな。そういう奴には仕入れたものを格安で販売してるんだ。必要なものがある時は割安で販売してやる。それと、俺が仕入れたいものを持ってるなら買い取りも可能だ。まあ、生きるためにここをうまく使えってこった」
ワシ「驚いた。そんなに歓迎されるとは思ってなかったから」
アナトリー「まあ、最近なぜか暇になったのも関係あるがな。何か見ていくか?」
ワシ「ああ、見せてもらうよ」
そう言うとアナトリーは陳列されている商品のどれが売り物でどれがそうでないかを教えてくれる。その間、ワシはただ説明を聞いているのではなく、店内をそれとなく見回していた。
そして、見つけた。
奥のテーブルの上にある黄色い封筒。おそらくあれがフィンから頼まれた手紙だろう。
ワシ「じゃあ、あの奥にあるサンベットを買わせてくれ」
アナトリー「おお、あれか。了解だ」
アナトリーは大きいベッドを取り出すために店の奥まで進む。その瞬間、ワシは音もなくカウンターを乗り越え、すばやく手紙を懐にしまい、もとの場所へと戻る。
アナトリー「よいしょ。ほら、これがお目当てのものだ」
気づかれた様子はない。作戦成功だ。
ワシは心が少し痛んだが、これも生きていくためだ。アナトリー、いずれ罪滅ぼしするから今は許せ。
身勝手な言い訳を自分自身に言いきせつつワシは店を出て、フィンの場所へと戻る。
ワシ「戻ったぞ。これがお目当てのものだろ」
フィン「おお、マジか。やるなアンタ。この前の発言は訂正するよ。アンタは一流だ」
ワシ「ところで、なんでこれが必要だったんだ?」
フィン「ああ、そのことか。俺はあいつに騙されたことがあってな。この手紙でその仕返しをしてやりたいのさ。アイツは俺の知り合いの女と浮気してやがるからな。この手紙はその証拠になる。陰湿に揺さぶるとかじゃない、この手紙を俺の知り合いに読ませてやりたいだけさ」
ワシ「盗みを働いたワシが言うもんでもないが、浮気はいかんな。ほら、これを受け取れ」
フィン「アンタには借りができたな。約束どおり、いいことを教えてやる。まずは、話しかける時のテクニックさ。通行人に相手にされるには服装に気をつけないといけない。話しかける前に軽くでもいいから身だしなみを少し整えるといいぞ」
ワシ「そうだったのか。ありがとう、参考にしてみるよ」
フィン「ああ、まあせいぜい頑張れよ。それと、この技も教えてやる。これだ」
ワシ「こんなことができるのか。ありがとう、参考になったよ」
フィン「ああ。またここに寄れよ。何かあればまた頼みたいしな。聞いてくれたらまた技を教えてやる」
ワシ「わかったよ相棒」
しばらくして、フィンからアナトリーが浮気相手の旦那さんにこっぴどく怒られたと聞いた。アナトリーの自業自得とはいえ、少し悪いことをした自覚はある。
この気まずい雰囲気は早めに解消するに限る。
ワシはそのままアナトリーの店に向かった。
ワシ「景気はどうだい旦那」
アナトリー「ああ、アンタか。最近はいいことがないぜ。知らない男には因縁をつけられるし、客は全然入らないしな」
知らない男は浮気相手の旦那さんのことだろう。そこは触れないでおくか。
ワシ「なんで店に客が来なくなったんだ?」
アナトリー「いくつか原因はあると思うが、そうだな。アンタ、頼み事を聞いてくれないか?」
ワシ「あいよ旦那! 任された」
アナトリー「まだ何も言ってねえよ。変なやつだな。まあ、悪い気はしないが」
ワシ「何をすればいいんだ?」
アナトリー「ちょっと聞き込み調査をしてほしいんだ。アナトリーの店についてどう思ってますかってな。そうしたら何か原因がわかるかもしれん」
ワシ「了解だ。なにかわかったら戻ってくるよ」
アナトリー「助かる。アンタは良いやつだな」
ワシ「ワシは良いやつなんかじゃない、ただのホームレスだよ。じゃ、行ってくる」
これだけで罪滅ぼしになるとは思えないが、せめて一生懸命調査をしてやろう。
そう思いつつワシは早速調査をしに街へと繰り出した。
¥¥¥残金:306クラウン¥¥¥
・バッドステータス
◯全パラメーター−10(永続)
◯体力低下(生命の危機)